アメリカ中間選挙で株価はどう動く? 過去のデータから読み解くアノマリー

米国株市場には、中間選挙の年にまつわる有名な「アノマリー(理論的根拠はないがよく当たる経験則)」が存在します。

S&P500や全世界株式(オルカン)などの投資信託を保有している人にとって、この過去のデータを知っているかいないかで、選挙前後のニュースの見え方や投資の心構えが180度変わってきます。

前回の記事で解説した「ねじれ議会」の仕組みを踏まえつつ、過去のデータから読み解く「中間選挙と株価の関係」をわかりやすく解説します。

この記事の3行要約
  • アノマリーの結論: 中間選挙の年は「秋口まで株価が不安定になりやすく、選挙後から翌年にかけて力強く上昇する」傾向がある
  • 驚異の過去データ: 1950年以降の過去19回、中間選挙後から1年間の米国株(S&P500)は「勝率100%(全勝)」で上昇している
  • 投資家の心理: 実は金融市場(ウォール街)は、政治が停滞する「ねじれ議会」をむしろ歓迎する傾向にある

結論|中間選挙における米国株の「アノマリー」とは?

株式市場のアノマリー(経験則)とは?

アノマリー(Anomaly)とは、直訳すると「変則性」や「異例」といった意味ですが、株式市場においては「はっきりとした理論的な根拠(企業の業績や経済指標など)では説明できないものの、過去の歴史を振り返ると、なぜか規則的にそうなりやすい経験則(ジンクス)」のことを指します。

有名なアノマリーには以下のようなものがあります。

  • 「夏枯れ相場」:8月は市場参加者が夏休みに入るため、株価が下がりやすい
  • 「セル・イン・メイ(5月に株を売れ)」:5月以降は株価が下落しやすい傾向がある
  • 「年末ラリー」:年末にかけて株価が上がりやすい

そして、アメリカの政治イベントの中で最強のアノマリーの一つと言われているのが、今回のテーマである「中間選挙の年の株価サイクル」です。

典型的な値動き|「選挙前は停滞、選挙後は力強く上昇」

結論から言うと、大統領の任期2年目に行われる中間選挙の年は、年間を通して以下のような特有の値動きをする傾向があります。

  • 選挙前(年初〜秋口):株価が不安定になり、大きく下落(調整)しやすい
  • 選挙後(11月〜翌年):不透明感が払拭され、株価が力強く急上昇する

歴史的なデータを見ると、中間選挙の年のS&P500は、年初来高値から平均して約18%から19%の下落を経験する傾向があります。

つまり、選挙が行われる年の前半から秋にかけては、投資家にとって「我慢の時期」になることが多いのです。

しかし、最も注目すべきは「その後」です。歴史が示しているのは、「秋に下がる」というパターンではなく、「秋に下がった後、選挙を境に力強く上がる」というセットのパターンなのです。

過去のデータが示す「米国株(S&P500)の驚異的な勝率」

米国の主要な株価指数であるS&P500の過去のデータを見ると、驚くべき事実が浮かび上がってきます。

1950年以降の全勝記録(選挙後1年間の上昇確率100%データ)

主な中間選挙後のS&P500リターン(1年間)

どんな経済危機・逆風の時期でも、選挙後1年間はすべてプラスを記録

1974年 +25.7%
オイルショック・ウォーターゲート事件直後
1982年 +30.1%
第二次オイルショック後の高インフレ・高金利
1994年 +26.4%
急速な利上げによる債券ショックの年
2002年 +20.8%
ITバブル崩壊・同時多発テロ後の低迷期
2010年 +12.0%
リーマンショックからの回復期
2014年 +2.7%
量的緩和(QE3)終了の転換点
2018年 +11.9%
米中貿易摩擦による相場急落の年
2022年 +10.1%
40年ぶりの急激なインフレと歴史的利上げ
出典:米キャピタル・グループなどの公開データをもとに作成
Capital Group: Can U.S. midterm elections move the market?

米大手運用会社キャピタル・グループなどの歴史的データによると、1950年から2022年までに行われた計19回の中間選挙において、「選挙の月(11月)から12ヶ月後のS&P500のリターン」は、なんと19回中19回すべてでプラス(勝率100%)を記録しています。

さらに驚くべきはその「上がり幅」です。 過去19回の選挙後1年間の平均上昇率は約15.4%に達しており、これは中間選挙以外の年の平均的なリターンの約2倍に相当します。

ベトナム戦争、オイルショック、ITバブル崩壊、インフレ懸念など、時代ごとに様々な経済危機があったにもかかわらず、「中間選挙後の1年間は株価が上がる」というジンクスは、過去70年以上にわたって一度も破られていないのです。

「不確実性(政治の先行き不安)」の払拭

投資家が何よりも嫌うのは、悪いニュースではなく「どうなるかわからない不確実性」です。

中間選挙の年は、年初から「どちらの党が勝つのか?」「大統領の政策はどう変更されるのか?」という不安が市場を覆うため、投資家は積極的に株を買いづらくなります(これが選挙前に株価が下がりやすい理由です)。

しかし、11月に選挙が終わって結果が確定すると、「良くも悪くもこれからの2年間の政治の形」がハッキリします。最大の不確実性が消え去ることで、投資家が安心して資金を株式市場に戻し始めるのです。

投資家が歓迎する「ねじれ議会」

前回の記事で、大統領の政党と議会の多数派が異なる「ねじれ議会」になると、法律や予算が通らず政治が停滞してしまうと解説しました。

一般の国民からすれば「何も決められないダメな政治」に見えるかもしれませんが、実は投資家にとって、この「ねじれ」は大歓迎なのです。

なぜなら、政治が停滞するということは「企業にとって不利な急激なルール変更(法人税の大幅な増税や、厳しい環境規制など)が通るリスクがなくなる」ことを意味するからです。

投資家からすれば「現状維持が約束された」ことになり、これも株価を押し上げる大きな要因となります。

日本株(日経平均)や「オルカン」にはどう波及する?

ここまで「アメリカの中間選挙後は米国株が上がりやすい」というデータを見てきました。

しかし、多くの日本人投資家にとって一番気になるのは、「自分が持っている日本株や投資信託にはどう影響するの?」という点です。

結論から言うと、この米国株のアノマリーは、日本人の資産運用にもダイレクトに波及します。3つの視点から解説します。

日本株は「米国株の後追い」になりやすい(日米株価の強い連動性)

「アメリカがくしゃみをすると日本が風邪をひく」という古い相場格言があるように、日本の株式市場はアメリカの株式市場と非常に強い連動性(相関関係)を持っています。

中間選挙が無事に終わり、アメリカの不確実性が払拭されてウォール街の投資家たちが「リスクを取って株を買おう!」という強気なムードになると、その資金は日本株にも流れてきやすくなります。

【日経平均】米大統領選サイクル別の平均上昇率

(各年の11月〜翌年3月までの累積平均騰落率)

大統領選挙の年 +7.98%
大統領選挙の翌年 +1.96%
中間選挙の年(★最も上昇しやすい) +9.79%
中間選挙の翌年 +5.10%
※1949年〜2025年のデータに基づく
出典:マネックス証券「米大統領選挙サイクル別に見た日経平均株価の累積平均騰落率」等をもとに作成

過去のデータを見ても、中間選挙後の米国株の上昇ラリーに引っ張られる形で、日経平均株価などの日本株も後追い的に上昇しやすい傾向があります。

つまり、米国株のアノマリーは日本株投資家にとっても大きな追い風になることが多いのです。

注意すべきは「為替(ドル円)」の動き(政治の混乱や利下げ観測による円高・円安リスク)

米国株や海外の投資信託を持っている人にとって、株価と同じくらい重要なのが「為替(ドル円)」です。

いくら現地のアメリカで株価が10%上がっても、同じ時期に強烈な「円高」が進んでしまえば、日本円に換算したときの利益は減ってしまうからです。

中間選挙の結果は、この為替に大きな影響を与えます。

例えば、前回の記事で解説した「ねじれ議会」になった場合です。

政府が大規模な財政出動(お金をばらまく政策)をしにくくなるため、アメリカの金利は上がりにくくなります。

金利が下がると「ドルを売って円を買おう」という動きになりやすいため、「株高・円高」という組み合わせになるシナリオが考えられます。

選挙後の政策期待や、それによるFRB(米連邦準備制度理事会)の金利政策への影響などから為替が大きく動く可能性があるため、「株価だけでなく為替の動きもセットで考える」ことが重要です。

オルカン(全世界株式)保有者はどう見るべき?(中身の6割が米国株という事実)

オルカンが連動を目指す指数(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)の国別構成比率を見ると、実に全体の約6割(60%以上)を「アメリカ1国」が占めています。 (※Apple、Microsoft、NVIDIAなどの巨大企業が上位を独占しているためです)

つまり、オルカンを買っているということは、「半分以上は米国株を買っているのと同じ」なのです。

したがって、中間選挙後に米国株がアノマリー通りに力強く上昇すれば、オルカンの基準価額も強烈に押し上げられます。

中間選挙後1年間の「全世界株式(オルカン)」の実績

アメリカ株の上昇に牽引され、
全世界株式も選挙後は高い確率で急上昇しています。

選挙年 当時の背景 選挙後1年間の
リターン
2006年 【指数データ】リーマンショック前の好景気 +19.8%
2010年 【指数データ】金融危機からの世界的な回復期 +7.3%
2014年 【指数データ】原油安や新興国不安の年 +1.4%
2018年 【eMAXIS Slim】米中貿易摩擦による相場急落 +13.5%
2022年 【eMAXIS Slim】急激なインフレと歴史的利上げ +21.5%
※2006〜2014年は大元となる「MSCI ACWI(円換算ベース)」のデータ
※2018〜2022年は「eMAXIS Slim 全世界株式」の月次基準価額(各年11月初旬〜翌年11月初旬)のデータをもとに作成


オルカン保有者にとっても、アメリカの中間選挙は「自分の資産が大きく増えるかもしれない大チャンス」として注目すべきイベントと言えます。

アノマリー過信は禁物! 過去のデータが通用しない例外パターン

「勝率100%なら全財産をつぎ込もう!」と思うかもしれませんが、投資に「絶対」はありません。

株価を左右するのは選挙だけではない(インフレ、FRBの金利政策、リセッション懸念)

株価のメインエンジンはあくまで「経済」です。

政治(選挙)のアノマリーはサブエンジンに過ぎません。

いくら中間選挙で不透明感が晴れても、「深刻な不況(リセッション)」や「FRBの急激な金利操作」といった特大の向かい風が吹けば、株価は容赦なく下落します。

「経済が通常運転であること」が、アノマリー発動の大前提です。

過去のデータ通りにいかなかった年の特徴

第2章で「選挙の1年後は勝率100%」とお伝えしましたが、そのデータには次のような「裏」があります。

  • 期間中に大暴落を挟んでいる 「1年後のゴール地点」ではプラスだっただけで、その間にマイナス20%クラスの暴落を挟み、投資家がパニックになった年はいくつもあります
  • 「円高」で利益が吹き飛んだ これが日本人にとって最大の罠です。米国株が+10%上がっても、同時に強烈な「円高」が進めば、日本円に換算した利益はマイナスになってしまいます
  • 「秋まで下落する」の前提が崩れた 「秋の安値で買おう」と待っていたら、企業の業績が良すぎて年初からずっと右肩上がりになり、結局買い場を逃すパターンです

過去のアノマリーは「勝つ確率」を教えてくれますが、「絶対の未来」は誰にもわかりません。データはあくまで参考の一つとして、常に冷静な視点を持ち続けることが大切です。

まとめ|波乱に惑わされないための投資スタンス

アメリカ中間選挙と株価の関係、ポイントはこの3つです。

  • 選挙前は低迷し、選挙後から翌年にかけて急上昇しやすい
  • 1950年以降、選挙後1年間の米国株(S&P500)は勝率100%
  • 米国株が6割を占める「オルカン」にとっても強力な追い風

アノマリーは投資の「優れた羅針盤」ですが、未来の「保証書」ではありません。データは味方につけつつ、冷静に相場と向き合っていきましょう。