冬季オリンピック「赤字」TOP5!ミラノも陥る予算3倍の罠

2026年2月、イタリア・ミラノとコルティナダンペッツォで冬季オリンピックが開催します。

IOC(国際オリンピック委員会)や組織委員会は、しばしば「大会は黒字でした」と発表します。しかし、そこには競技場の建設費やインフラ整備費が含まれていないことがほとんどです。

それらを含めた「実質コスト」で見ると、冬季オリンピックは「開催国が貧乏くじを引くイベント」になりつつあります。

今回は、過去のデータを紐解き、「最も損をした(お金がかかった)開催地」をランキング形式で発表します。

そして、今まさに進行しているミラノ五輪の「予算崩壊」の実態に迫ります。

なぜオリンピックの予算が膨れていくのか?

「勝者になるため」過少申告

招致レースに勝つためには、IOC(国際オリンピック委員会 )に対して「私たちの都市なら、こんなに安く開催できます」とアピールする必要があります。

この段階では、あえてインフレリスクや予備費を極限まで削った「理想の数字」しか出しません。

これを経済学で「勝者の呪い(Winner’s Curse)」と呼びます。落札した瞬間に、赤字が確定しているのです。

冬季特有の「テラフォーミング」コスト

夏のアスファルトの上にスタジアムを建てるのとは訳が違います。

冬季五輪は、手つかずの雪山に電気・水道・ガスを通し、道路を切り開く必要があります。

これは建設工事というより、「地図を書き換える(テラフォーミング)」作業に近いため、地質調査の段階で見えなかった想定外の出費が必ず発生します。

警備費の青天井

9.11テロ以降、五輪の警備費は右肩上がりです。

特に近年の国際情勢(戦争や紛争)の悪化により、サイバー攻撃対策やドローン対策など、招致段階では想像もしなかった「見えない敵」への対策費が、開催直前になって数千億円単位で積み上がります。

オリンピックが赤字になりやすい理由

赤字はすべて開催都市が補填せよ

IOCと開催都市が結ぶ契約には、恐ろしい条項があります。

「大会運営費が不足した場合、IOCは一切責任を負わず、すべて開催都市(および開催国の政府)が補填しなければならない」 つまり、利益(放映権料やトップスポンサー料)の多くはIOCがスイスへ持ち帰り、借金だけが現地に残る仕組みが完成されているのです。

これが「商業五輪」の正体です。

💰 IOC (主催者)
放映権料:73%確保
赤字責任:なし
(スイスへ持ち帰り)
💸 開催都市
建設費:全額負担
赤字責任:無限責任
(税金で補填)

貴族のような「おもてなし」要求

開催都市は、IOC委員(通称:五輪貴族)のために、最高級ホテル、専用レーンのある移動車、豪華な食事を用意する義務を負います。

長野五輪の際も、彼らへの過剰な接待費が問題になりましたが、この「貴族体質」は今も変わっていません。

私たちが払う税金の一部は、彼らのワイン代に消えていると言っても過言ではないです。

📌 IOCの「お金」に関する事実
  • 放映権料の配分:
    IOCの収入の約73%は放送権料ですが、その収益の分配権限はIOCにあり、開催都市が赤字になってもIOCは補填しません。
    How the IOC finances the Olympic Games (IOC Official)
  • 開催都市契約(Host City Contract):
    「赤字補填保証(Deficit Guarantee)」条項により、最終的な赤字は開催都市および国が負担することが明記されています。

冬季オリンピック「実質コスト」ランキング ワースト5

💰 冬季五輪「実質コスト」比較
ソチと北京の異常な散財
🇷🇺 ソチ (2014) 約5.5兆円
🇨🇳 北京 (2022) 約4.2兆円
🇯🇵 長野 (1998) 約1.5兆円
🇰🇷 平昌 (2018) 約1.4兆円
🇮🇹 ミラノ (2026予測) 約1.0兆円?
※インフラ整備費等を含めた実質推計額(1ドル=145円換算イメージ)
出典:オックスフォード大研究、各社報道より筆者作成
📊 データの出典・参考文献(クリックで表示)

第5位:トリノ(2006年・イタリア)

実質コスト:約20億〜30億ドル規模(当時のレートで約3,000億円〜

2026年の開催国でもあるイタリアですが、実は20年前のトリノ五輪でも、その「計画の甘さ」は致命的でした。

当初は民間資金中心の運営を目指していましたが、スポンサー集めが難航し、開幕直前には資金ショートの危機に直面しました。

「このままでは大会が開けない」という緊急事態に陥り、最終的にはイタリア政府がサッカーくじの収益金を投入し、IOCも異例の資金援助を行うことでなんとか開催に漕ぎ着けました。

しかし、負の遺産は残りました。ボブスレーコースなどの競技施設は大会後に維持費が払えず放置され、一部は難民の居住地として使われるなど、「廃墟化」が社会問題になりました。

第4位:平昌(2018年・韓国)

実質コスト:約130億ドル(約1兆4,000億円)

「平和の祭典」という美名の下で行われた平昌五輪ですが、経済的には「コスパ最悪の大会」として記録されています。

最も象徴的なのが、開閉会式のためだけに建設されたメインスタジアムです。約100億円以上を投じて建設されましたが、屋根すらない吹きっさらしの構造が批判を浴び、大会終了後わずか数ヶ月で「維持費の無駄」として解体されました。

実働日数はわずか4回になり、一晩あたり25億円が消えた計算になります。

また、環境保護団体との約束で「大会後は植林して森に戻す」はずだった滑降コース(加里王山)は、復元予算の確保が難航し、現在もハゲ山のまま放置され、土砂災害のリスクに晒され続けています。

第3位:長野(1998年・日本)

実質コスト:約1兆〜1.5兆円(新幹線等の関連インフラ含む)

私たち日本人にとって、感動の記憶とともに語られる長野五輪ですが、その財布事情は「ミステリー(闇)」に包まれています。

北陸新幹線や高速道路の整備が一気に進み、長野へのアクセスが革命的に良くなったのは事実です。

しかし、その巨額投資の代償として、長野市は借金(市債)の返済に約20年という長い年月を費やしました。

さらに特筆すべきは、招致活動に関する不透明な資金の流れです。使途不明金への疑惑が高まる中、招致委員会が「会計帳簿をすべて焼却処分した」ことが発覚しています。

金の流れを物理的に消し去るという、先進国にあるまじき隠蔽工作が行われました。

📉 長野市の借金返済ロードマップ
1998開催
2018完済
苦節20年

生まれた子供が成人するまで、市は借金を返し続けました。

📌 長野五輪に関するファクトチェック

第2位:北京(2022年・中国)

実質コスト:約380億ドル以上(推定約4兆〜5兆円)

「低コストでコンパクトな大会(予算39億ドル)」という公式発表を信じている専門家は少ないです。

最大の問題は、雪の降らない乾燥地帯での開催を強行したことです。

雪のほぼ100%を人工雪で賄うため、数キロに及ぶパイプラインを敷設し、ダムから大量の水を汲み上げ、大量の電力で雪に変えました。

さらに、徹底した「ゼロコロナ政策(バブル方式)」を実現するための隔離施設建設やPCR検査体制、警備費用を含めると、その総額は天文学的な数字になります。

まさに国家の威信を保つためなら、金に糸目はつけないというチャイナマネーの底力と恐ろしさを見せつけられた大会でもありました。

第1位:ソチ(2014年・ロシア)

実質コスト:約510億〜550億ドル(約5兆5,000億円〜)

冬季五輪史上、今後も破られることのないであろう「散財記録」です。

そもそもソチは、ヤシの木が茂る亜熱帯のサマーリゾート地でした。そこで冬の五輪をやるために、プーチン大統領は山岳地帯までの道路、鉄道、ホテル、発電所、通信網など、街一つをゼロから作り変える土木工事を行いました。

特筆すべきは、山岳会場へ続く約48kmの道路建設費です。あまりの金額の高さに、当時のロシアの野党指導者は「この道路は、道路の厚さ数センチ分を『キャビア』あるいは『ルイ・ヴィトン』で敷き詰めたほうが安上がりだった」と痛烈に批判しました。

巨額の予算の一部は、プーチン大統領の友人が経営する建設会社に流れ、汚職の温床になったとも噂されています。

そして歴史は繰り返す。2026年ミラノ五輪の「罠」

「過去の失敗から学んで、今回はスマートにやる」 そう言って招致に勝ったのが、2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪でした。

「既存施設を使う」という嘘

当初、「施設の90%以上は既存のものを使うからお金はかからない(予算約15億ユーロ)」というのが売り文句でした。しかし、老朽化した施設の改修費は予想以上に高くつき、資材価格の高騰も直撃。なし崩し的に費用は増え続けました。

ボブスレーコースの迷走

象徴的なのが、コルティナのボブスレー会場です。 当初は「コスト削減のために隣国スイスのコースを借りる」という賢い計画でした。

しかし、政府や建設業界の「国威発揚」「自国開催へのこだわり」が発動し、結局は100億円以上をかけて建て替えることになりました。

たった2週間のために巨額の税金が投入され、長野や平昌と同じことが繰り返されています。

最新の試算では、関連インフラを含めた総額は60億ユーロ(約1兆円)に迫るとも言われています。

まとめ:私たちは「五輪マネー」とどう付き合うべきか?

過去のデータから、そして2026年ミラノ五輪の現状を見てきた通り、オリンピックはもはや純粋なスポーツイベントであると同時に、巨大な「公共事業」であり、一部の特権階級のための「集金システム」という側面は否定できません。

国や組織委員会が発表する「感動」の裏には、これだけの「見えない借金(税金)」が隠されています。インフレ、建設費高騰、見通しの甘さがこれらは国家プロジェクトですらコントロールできない「現代の病」なのです。

お金の話はドロドロしていますが、その舞台に立つアスリートたちの努力と涙は、紛れもない「本物」です。 4年に一度、人生を賭けた戦いを、せっかくならその一瞬の輝きを最高画質のテレビや配信で目撃しましょう。