熊報道はなぜ多い?死者が数人でもマスコミが煽る「コスパ」の裏側

毎日ニュースやSNSを見ていると「熊」の話題が非常に多く、まるで日本中が熊に包囲されたような恐怖感すら覚えた時期がありました。

冷静に数字を見ると「過去最悪」と言われていた2023年度の記録を超え、統計開始以来2025年は最も多い死者数で、2025年12月の時点で13人でした。

確かに増えてはいるが、ここまでマスコミが騒ぐ本当の理由はなんなのか。マスコミにとって都合の良すぎる「4つのコスパ」と「数字のトリック」が存在します。

数字で見る違和感:熊より怖いお風呂や食べ物

年次 ①お風呂
(浴槽溺死)
②食べ物
(誤嚥)
③転倒
(階段等)
④蜂
(刺傷)
⑤熊
(獣害)
2019年 4,900人 3,962人 848人 11人 1人
2020年 4,756人 3,983人 887人 13人 2人
2021年 4,750人 4,124人 933人 15人 12人
2022年 4,728人 4,204人 985人 20人 3人
2023年 4,923人 4,374人 1,021人 21人 6人
2025年
(参考)
集計中 集計中 集計中 集計中 13人
(速報値)

【データ出典・公的機関リンク】

上の表は、より身近に死亡している例をいくつかまとめてみました。

「国の死亡統計」から、マスコミがあまり報じない「桁(ケタ)違い」がでてきています。

熊の370倍危険な「リラックス・タイム」

まずは、厚生労働省が発表している「不慮の溺死(浴槽)」のデータです。 これは海や川ではなく、家の中の「お風呂」で亡くなった人の数です。

最新データーでは、熊の被害で亡くなった人は「13人」対して、お風呂で亡くなっている人は、ここ5年間で平均4800人です。毎晩無防備に入っている「お風呂」の方が、約370倍も死ぬ確率が高いです。

食卓は戦場?「餅」や「パン」の破壊力

次に、家の中での「誤嚥(ごえん)」、つまり食べ物を喉に詰まらせて亡くなる事故です。食べ物による死者はここ5年で平均4000人ほどです。

お正月の「餅」による窒息事故が急増します。消費者庁のデータ分析によれば、たった3が日の餅事故だけで、年間の熊被害を上回る死者が出ることも珍しくありません。

なぜテレビは「お風呂」や「パン・餅」を報じないのか?

ここでおかしなことに気づきませんか?

これほど多くの人が「お風呂」や「食べ物」で亡くなっているのに、テレビで「緊急特番!殺人お風呂の恐怖」や「パンを規制せよ!」というニュースは流れません。

たまに特集やワイドナショーで年に数回取り上げられるだけです。

ではなぜマスコミは数字(死者数)が少ないのに報道するのか? それは熊が「コンテンツとして優秀すぎる」からです。

マスコミが熊を愛する「4つのコスパ」

映像の入手コストが「0円」

今はドライブレコーダーやスマホ動画など、視聴者が激レア映像を撮って送ってくれます。または、SNSに投稿した動画を簡単に取材費ゼロで使っていいか尋ねて使っています。

しかし、「不慮の溺死(浴槽)」や「誤嚥(ごえん)」は、そもそも映像を入手することが困難です。

たまたま撮影してたとしても、その映像を放送するのはかなり難しいです。モザイクをかけたとしても、裸の姿や嗚咽している映像を流しずらいためです。

「正義 vs 悪」の構図が作りやすい

「人を襲う猛獣」という分かりやすい悪役がいるため、ストーリーを作りやすいです。

また「正義vs悪」という構図以外にも、「動物愛護団体vs自治体・猟友会」や「動物愛護団体vs税金」などの構図も作りやすいです。

尺(時間)が埋まる

専門家(猟友会など)に電話すればすぐコメントが取れます。

「どうすれば助かったか?」というシミュレーション映像は、視聴者が怖がってチャンネルを変えない(視聴率維持率が高い)

さらに愛護団体の意見、地元に住んでいる意見、農家の意見、海外の事例、国、県、町など、広げようと思えばいくらでも話題を広げることができ、時間が長いワイドナショーなどでは尺を埋めやすいです。

スポンサーに忖度しなくてもいい

これが最大の理由かもしれません。 極端な話をすると、「餅は喉に詰まるから、お年寄りは控えましょう」と放送したい場合、もし番組スポンサーに食品メーカーがいれば、なかなか強くは言えません。

同様に「緊急特番!殺人お風呂の恐怖」なんて内容を放送したら、住宅設備会社やガス会社のスポンサーはついてくれなくなります。

対して、野生動物である「熊」にはスポンサーがいません。いくら悪者にしても営業的な配慮をする必要がないため、マスコミにとって非常に「叩きやすい(扱いやすい)」存在なのです。

私たちは「利用可能性ヒューリスティック」に支配されている

心理学のトリック

お風呂よりも熊を怖がるのでしょうか? それは、人間が「頻繁に見るもの」=「発生確率が高い」と錯覚する脳のバグ(利用可能性ヒューリスティック)を持っているからです。 飛行機事故と同じで、派手な事故ほど「怖い」と感じますが、実は地味な事故(転倒や餅)の方が圧倒的に多くの命を奪っています。

結論: 私たちが感じているのは「生物学的な恐怖」ではなく、メディアによって増幅された「演出された恐怖」の可能性があります。

そもそもなぜここまで熊を恐れてしまうのか

これには、「進化心理学」の視点から説明がつきます。専門的には「生物学的準備性」と呼ばれる概念です。

人類は長い歴史の中で、常に猛獣に「捕食される側」でした。そのため、私たちの脳には「生きながら体を食べられる痛みと恐怖」に対して、強烈な拒絶反応を示すプログラムが刻み込まれていると言われています。

一方で、「お風呂」や「餅」という文明の利器は、進化の歴史から見れば「つい最近」登場したものです。 脳はこれらを「天敵」として認識できません。どんなに危険でも、お風呂を見て「逃げろ!」という本能アラートが鳴らないのです。これを「ミスマッチ理論」と呼びます。

マスコミはこの「脳のバグ(進化のズレ)」を巧みに利用しています。「熊=食われる」という原初的な恐怖を刺激することで、私たちの理性を麻痺させ、チャンネルを固定させているのです。

熊鈴を買う前にやるべき「本当の生存対策」

熊対策のスプレーを買うなとは言いません。しかし、確率論で言えば、その数千円を以下の対策に使った方が、あなたの生存率は劇的に上がります。

「ヒートショック」という見えない敵を撃退する

お風呂での死因の多くは、脱衣所と浴槽の温度差による「ヒートショック」です。

  • 脱衣所に小さなヒーターを置く
  • お風呂のフタを開けて、蒸気で浴室を温めてから入る。 これだけで、年間5,000人が死ぬリスクを大幅に減らせます

餅を詰まらせない対策

  • 高齢者には、餅を親指の爪サイズまで小さく切る
  • 食べる前に、お茶や汁物で喉を潤しておく

まとめ:正しく恐れて、賢く生き残る

熊対策は必要だが、パニックになる必要はない。本当の「生存戦略」とは:

  • テレビが報じない「マダニ」に備えて長袖を着ることや、高齢の親に「餅」を小さく切ってあげることの方が、統計的にはよほど命を救う

「ニュースは『珍しいから』報じられる。日常に潜む本当の死因は、カメラが来ない場所にある可能性が高いです。」